第10回コラム
綿100%なのに、なんで値段がちがうの?
キモは繊維長にあり
「綿100%」のジーンズは世の中にたくさんありますが、値段は高いものから安いものまで様々です。
どれも綿100%なのに、なんでそんなに値段が違うのか、多くのみなさんにとってナゾでしょう。
実際私も、ベンツとクラウンは装備も性能もだいたい同じなのに、なんであれほどの価格差があるのか、ブランドの違いという以外はナゾです。
もちろん、ジーンズもブランドの違いは大きいですが、値段の違いはそれだけではありません、
その違いはズバリ!「コットンの繊維長」です。
繊維長とは、その名の通り、繊維の長さ。
コットンボール(綿花)からワタを1本つまんで引っ張り出した、そのワタの長さのことです。
お手元の洋服が織り物(ニットではなく)であれば、裏の縫い代の端っこから織り糸を引っぱり出して、ほぐすとワタを取り出せます。
このワタが長ければ長いほど、高級なコットンとされます。
コットンは長い順(値段が高い順)で、下のように分類されます。
・超長繊維 35mm以上
・長繊維 28〜35mm
・中繊維 20〜28mm
・短繊維 10〜20mm
ひとつのコットンボールにも、長短のワタが混在していて、コーミングという工程を経て、長さをより分けて流通します。
より分けたコットンのおよそ90%が中繊維に属し、長繊維でもほんの数%しかなく、超長繊維ともなれば極めて希少です。
地球上で最も高級な繊維のひとつはシルクで、古来より人類にとって最高級の繊維とされてきました。
日本では天皇や将軍、欧米では王様や貴族など、偉い人やお金持ちに重用された歴史があり、人間のDNAに刷り込まれた高級繊維です。
シルクは繭(まゆ)から取れるひとつながりの繊維ですので、コットンも繊維長が長いほどシルクに近づき、希少価値が高いのです。
ここから想像力が必要なお話し。
繊維長が長ければ、それほど撚らずに糸になるので、ふっくらやわらかく、シルクのような光沢豊かな糸になり、洗濯をくり返しても毛羽立ちが少なくなります。
短い繊維はその逆で、撚りをたくさんかけないと糸にならないので、固くガサガサして、洗濯すると見る見る毛羽立って白らっちゃけてきます。
最も安い短繊維は糸に紡げないので、脱脂綿やオムツの材料になります。
ということで、長繊維以上のコットンは、マグロでいう「大トロ」ということになります。
超長繊維となれば、大間の本マグロの大トロクラスです。
大間の大トロの超長綿は
・アメリカの「スーピマ」
・ジンバブエの「サンアルバ」
・インドの「スビン」
・カリブの「海島綿」
・エジプトの「ギザ」 など。
大トロ・中トロ・赤身では値段が違いますから、コットンもそれと同じなのです。
しかし品質表示は別。
例えば、マグロで作ったソーセージの品質表示は、大トロで作ろうが、赤身で作ろうが、どちらも「魚肉100%(まぐろ)」になりますよね。
それと同じで、コットンもどれを使おうが、「綿100%」としか法律で書けないのです。
サキュウのアンティークシリーズに使われるコットンは長繊維以上の長いもの。
とりわけ、antique denimのスタンダードシリーズに使われるのは、ジンバブエコットンの超長繊維です。
サキュウは決して安くないジーンズですが、それだけの価値ある材料をしっかり使っています。
これだけの材料使ってますから、名のあるハイブランドなら数倍のプライスタグが付いてもおかしくありません。