第11回コラム

アパレルOEMのお話

底が抜けました。

私どもの祖業のアパレルOEMですが、現在は既存のお取引先だけに限らせて頂き、ご新規様は基本的にお断りしております。

 

結論から言いますと、OEMは全く儲からなくなってしまったからです。

 

 

儲からなくなった原因は、新規参入を含めて同業者が増えすぎてしまい、価格競争の底が抜けたことです。

 

私どもが創業した2001年はまだまだ未開拓の分野でしたが、現在では下請けだけでは食えなくなった縫製工場・加工工場・生地屋、倒産やリストラにあったアパレル出身者、商社出身者などなど、市場規模を遥かに超える数のプレイヤーが乱立しています。

 

新参組は取引先開拓のためにライバルよりも安い価格で納入して、次の新参者がまたその下をくぐるのくりかえし。

「ちゃんとコスト計算してるのか?」と思えるほどの価格が当たり前になって、利益度外視で注文を奪い合う無限ループに突入しています。

 

ここ最近、数十億円の売上を誇った大手のOEM会社がバタバタと倒産・廃業しており、注文を受ければ受けるほど、作れば作るほど赤字だったのでしょうし、実際当社もそうなっていました。

 

 

当社のOEM部門も、かなりの有名ブランドとお取引がありましたが、熾烈な受注合戦を勝ち抜くため、ギリギリの薄利になっていました。

それでも、見積り上では多少の利益をとれていたはずが、以下の理由で利益が消滅していたのです。

 

例えば家族5人分のチャーハンをゼロから作るとき、ごはんを使い切っても、肉や野菜、調味料が余ります。

それと同じで、100着分のジーンズを作る資材を調達するとき、何もかも業版単位で買う必要があります。

表地だけはちょうど使い切ったとしても、ポケット地や芯地、ボタンやリベットなどの付属類がどうしても余ります。

悪い事に、大量に余った付属類はデザインに関わるものなので、チャーハンの材料と違ってほとんど転用できません。

1000着だと無視できるレベルの余剰資材が、小ロット生産では大きなダメージなのです。

 

転用できない資材を使うようにデザインしたのは発注側のブランドですから、余った資材はブランド側がきれいに決済するのが当たり前なのですが、業者が極端にダブついているOEM業界はブランド側が恐ろしく有利なので、余剰資材の決済など困難を極めます。

事前の見積に含めようにも、見積を出した後に展示会が行われて数量が確定するので、ロスの読みようがありません。

だからと言って、多めにロスを見込むと見積価格が高くなって、(ロスの見込みが甘い)ライバルに仕事を奪われることになります。

 

試しに、とあるブランドに余剰資材の決済をお願いしたところ、それ以降オーダーがぴたりと来なくなりました。

踏み倒せる(というか、その自覚すらない)同業者は他にいくらでもいるということです。

 

 

こんな調子で、利益のほとんどが消滅してしまい、OEM事業は人件費も捻出できないほど赤字続きでした。

 

製作にかかったコストをきれいに決済しようというクリーンな取引をしてくれるブランドなどこの世に存在するのか、疑問になります。

それでいて消費者の前では、「こだわりの日本製」「フェアトレード」「地球にやさしい」だの、もう半笑いするしかありません。

 

 

この先OEM業で生き残るには、「工場を回すためにとにかく仕事とってこい!」という特攻マインドの会社でなければ継続は難しいでしょう。

 

 

というわけで、現在のOEM事業は、担当を置かずに細々と続けているので、ご新規様は物理的にお引き受けできなくなっております。

 

 

OEM業界では、先に燃料が尽きた方から墜落するような命がけのフライトが今日も進行中です。