第11回コラム

アパレルOEMのお話

値段も心も底が抜けました。

私どもの祖業のアパレルOEMですが、現在は既存のわすかなお取引先だけに限らせて頂き、ご新規様は基本的にお断りしております。

 

その理由を結論から言いますと、OEMは全く儲からなくなってしまったからです。

 

 

原因は、新規参入を含めて同業者が増えすぎてしまい、価格競争の底が抜けたことです。

 

現在のOEM業界は、下請けだけでは食えなくなった縫製工場・加工工場・生地屋、倒産やリストラにあったアパレル出身者、商社出身者などなど。市場規模を遥かに超える数の業者が乱立しています。

 

新参組は取引先開拓のためにライバルよりも安い価格で納入しますが、次の新参者がまたその下をくぐるのくりかえし。

最近では「ちゃんとコスト計算してるのか?」と思えるほどの価格が当たり前になって、利益度外視で注文を奪い合う無限ループに突入しています。

 

ここ最近、数十億円の売上を誇った老舗のOEM会社がバタバタと倒産・廃業しており、注文を受ければ受けるほど、作れば作るほど赤字だったのでしょうし、実際当社もそうなっていました。

 

当社のOEM部門も、熾烈な受注合戦を勝ち抜くため、営業マンがとってきた注文はほぼ全てが赤字でした。

見積り上では多少の利益をとれていたものの、以下の理由で利益が消滅していたのです。

 

例えば、100着分のジーンズを作る資材を調達するとき、メーカーからは業版単位で買う必要があります。

表地はもちろん、ポケット地や芯地は反単位、ボタンは500ケ単位、リベットは2000ケ単位で、それぞれコマ(専用の金具)も必要です。

悪い事に、100着分のジーンズ作った後に大量に余った資材のほとんどは転用できません。

ラーメンを100人前作った具材や調味料の余りは転用できても、デザインに関わる洋服の資材は転用しにくいのです。

1000着では大した影響のない余剰資材が、50着の小ロット生産では井上直哉のボディーブローのように大きなダメージでした。

 

普通は「xx着オーダーするから見積りを出してくれ」ですが、アパレルの場合は展示会前に見積りを出さねばならないので、実際にどれほど発注があるかは展示会が終わってみないとわかりません。

200枚かもしれないし、50枚かもしれないのに、見積りだけ先に出すという、ちょっとおかしな風習です。

それでいて値切り交渉はいっちょ前にしてきます。

 

このように、猛烈に買い手有利な商慣習の業界で、余剰資材の決済は困難を極めます。

試しにある取引先に余剰資材の決済をお願いしたところ、それ以来オーダーが来なくなりました。

踏み倒せる(踏み倒されてることに気付かない)業者は他にいくらでもいるということです。

 

さらにさらに、メーカーはA品しか受け取ってくれないので、B品(不良品)もロスとなります。

製品を洗った後で寸法や色目を規格に合わせるデニムという特殊な製品は、ケチをつけようと思えばいくらでもケチつけられるものです。

その判断基準は、納品先のさじ加減や担当者のご機嫌任せなので、販売上全く問題がないわずかな点にケチをつけて、値引の強要も日常です。

 

結果的に、これらの理由によって、利益のほとんどが消滅していました。

 

OEM業で生き残るには、自社で工場を持ってて、工場を回すためにとにかく仕事とってこい!というマインドの会社でなければ難しいでしょう。

 

 

というわけで、現在のOEM事業は、専任を置かずに細々と続けているので、ご新規様は物理的にお引き受けできなくなっております。

 

 

OEM業界では、先に燃料が尽きた方から墜落するような命がけのフライトが今日も進行中です。