第9回コラム
インディゴの話
今回のお話はインディゴのお話ですが、何のウラ取りもしてない自己考察なので、「多分こうだったじゃないか劇場」です。
さて、ジーンズはなぜインディゴブルーなのか?ですが、ジーンズマニアに支持されている論は、インディゴ染料に含まれる成分によって、ガラガラヘビが逃げるとか、防虫効果があるとかですが、含まれるその成分はごくわずかなので、効果もわずかでしょう。
実際、何10年か前のあるテレビ番組で、ジーンズをガラガラヘビに噛ませるという企画をやってましたが、ヘビは何の躊躇もなく一瞬で噛みついていました。
私が考えるのはズバリ!「一番安い染料だったから」だと考えています。
ジーンズの原型が誕生したのは1850年頃とされています。
この頃の日本はといえば、坂本龍馬が活躍していた時代ですから、いかにジーンズに長居歴史があるのか、おわかりかと思います。
で、最初のジーンズは金鉱堀りの作業服として製作されて、生地は幌馬車の幌(キャンバス)で作られていました。
その色はキナリ、またはブラウン。
泥仕事にキナリ色では汚れが目立つので、何かの色に染めたいところですが、その頃の染料は草木や昆虫を原料とする天然由来のものしかなく、希少かつ高価だったので、とても労働者が買える値段じゃありませんでした。
ここで、日本の江戸時代の農民や町人を思い出して下さい。
庶民はみな、木綿の藍染めの着物や野良着を着ていますよね。
そうなんです、この時代に一般の人々が買える(安くて大量に供給できる)染料は、天然の本藍だけだったのです。
それは日本に限った事ではなく、世界中がそうでした。
藍染めはエジプト時代にはあったという説もあります。
そもそも当時のジーンズはファッションでなく、純粋な作業着です。
作業着メーカーの本分は、縫製やシルエットの美しさより、とにかく安くて丈夫で動きやすいものであって、安くするには効率的に大量に作ることです。
本藍とはいえコストがかかりますから、染めるのはタテ糸だけにして、ヨコ糸は染めずに白のままにすれば、染料代は半分で済みます。
その上で、綾織りにすれば、ぶ厚く・丈夫になり、白いヨコ糸も表から目立たなくなるので、まさに一石二鳥です。
ジーンズが登場してしばらくは天然藍で染めていたと思われますが、1890年頃には本藍より劇的に安い石油由来の合成インディゴが実用化されていますので、コストダウン命のジーンズは早々にこれにとって変わったはずです。
ジーンズの代名詞であるLevi's 501XXが登場したのも1890年頃ですが、合成インディゴの実用化の時期とリンクしており、もしかしたら合成インディゴで画期的に安価になった新型ジーンズを「501」と命名しのではないか? だとしたら、本藍染めの501は存在しないのではないか?と考えるところです。
後のコラムで書こうと思いますが、501のデザインは、作業服としての丈夫さと生産効率を極限まで追求したら、勝手にこういうデザインになったかのように思え、その過程に「ファッション性」は微塵もありません。
「安く大量に効率よく生産する」のもの作りの視点で分析すると、ジーンズの別な歴史が見えます。